歴史と動画配信サービスのあゆみについて
消費者調査結果を元に推計したものよると、2015年の動画配信の市場規模は、前年比27.9%増となっており、2015年を境にオンデマンドサービスが広く普及していったといえます。普及の理由としてどんなことがあったのでしょうか?
日本のNTTドコモとエイベックス・グループが共同で展開するdtvとハリウッド企業から日本テレビが買収したhuluが健闘するなか、世界にシェアを伸ばしつつあったオンデマンドサービスNetflixが2015年に日本に上陸しました。これに対して、国内のオンデマンドサービス各社はその強みを活かして邦画や国内ドラマなどのコンテンツを充実させ、海外のオンデマンドサービスに対抗しました。また支払い方式についても「ペイパービュー(PPV)方式」や「定額見放題」など利用しやすいスタイルを選べるようにするなど、視聴者のニーズに応えるサービスを工夫していったことが、2015年以降にオンデマンドサービスが一気に広がった理由のひとつとして考えられます。
現在ではかなり定着してきているオンデマンドサービスですが、その当初から人気を獲得していたわけではありません。何故、日本でオンデマンドサービスは開始当時にはなかなか普及しなかったのでしょうか。
2015年以前の日本では、アメリカほど各家庭にパソコンが普及していなかったために、パソコンでの視聴というスタイル自体が馴染まなかったことが理由のひとつとして挙げられます。また、ネット環境も今とは違い通信が安定していなかったため映像の視聴にあまり適さなかったことも一因と考えられます。
このようにオンデマンドサービスで魅力的なコンテンツがあったとしても、一般的には視聴するための環境が広がっていませんでした。そんななか、アニメ配信と見逃し配信は例外的に特定のファンを掴むことができたというのは、アニメファンあるいはコアなドラマファンにはパソコンやネット環境を早くから維持していた人が多かったのかもしれません。
急激にオンデマンド人気が出た背景には、家庭へのパソコンの普及のほかに、もう1つ大きな理由として、私たちが今では日常的に利用しているスマホの普及が挙げられます。そこで、次項でスマホの普及に伴うオンデマンドサービスの拡大について考えてみましょう。
オンデマンドサービスがシェアを拡大できた背景には、特に若年層へのスマホの普及がありました。スマホが普及したことによって家にパソコンやネット環境がない人でも視聴しやすい環境が整い、オンデマンドサービスの大きな転換期となりました。
オンデマンドサービスを提供する各社はビデオオンデマンドのみで配信されるオリジナルコンテンツにも力を入れており、若い学生たちの間でも人気を呼んでいます。また、スポーツや音楽、料理番組など特定のジャンルのみを配信するアプリも登場し一定数の人気を得ています。
テレビではまだ放送されていない海外・国内映画やドラマ、アニメ、テレビ番組の見逃し配信などを1人ひとりが好きなときに利用できる自由があるということが、今の生活スタイルに馴染みやすいといえるのかもしれません。
また、スマホが若者でも維持できる価格帯になったことも、若者世代にスマホが普及した理由のひとつでしょう。スマホを手にした若者世代は、家に帰ってテレビのリモコンを手にする前に、まずスマホを見るといわれるほどテレビよりもスマホに触れる頻度が高くなっているようです。
50代以上の高齢者についても、現在はまだパソコンからの利用が多く見られますが、高齢者向けのスマホの開発と共にそれらが徐々に普及していくにつれ、スマホからの利用が増えていくと考えられます。